問題
問6
BSC(Balanced Scorecard)に関する記述として、適切なものはどれか。
- 企業や組織のビジョンと戦略を、四つの視点(“財務の視点”、“顧客の視点”、“業務プロセスの視点”、“成長と学習の視点”)から具体的な行動へと変換して計画・管理し、戦略の立案と実行・評価を支援するための経営管理手法である。
- 製品やサービスを顧客に提供するという企業活動を、調達、開発、製造、販売、サービスといったそれぞれの業務が、一連の流れの中で順次、価値とコストを付加・蓄積していくものと捉え、この連鎖的活動によって顧客に向けた最終的な“価値”が生み出されるとする考え方のことである。
- 多種類の製品を生産・販売したり、複数の事業を行ったりしている企業が、戦略的観点から経営資源の配分が最も効率的・効果的となる製品・事業相互の組合せを決定するための経営分析手法のことである。
- 目標を達成するために意思決定を行う組織や個人の、プロジェクトやベンチャービジネスなどにおける、強み、弱み、機会、脅威を評価するのに用いられる経営戦略手法のことである。
[出典:ITパスポート試験 令和2年度 問6]
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正解
正解は「ア」です。
解説
正解の選択肢「ア」は、Balanced Scorecard(BSC)に関する説明として最も適切です。
BSCは、企業や組織が掲げるビジョンや戦略を、具体的な行動計画に落とし込んで管理・運用するための経営手法です。特徴的なのは、単に財務面だけでなく、「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「成長と学習の視点」という4つの観点からバランスよく戦略を評価・実行するという点にあります。
たとえば、「顧客満足度を向上させたい」という戦略を掲げた場合、それが売上(財務)にどう影響するか、業務プロセスをどう改善すべきか、社員のスキルアップ(学習)をどう図るかといった複数の視点から目標を設定し、PDCAサイクルを回していくのがBSCの基本的な使い方です。これにより、企業全体の戦略の整合性が保たれ、組織的な成果に結び付きやすくなります。
- イ(製品やサービスを顧客に提供する…):
この選択肢は「バリューチェーン」に関する説明です。企業の価値創造プロセスを分析し、どの活動がどれだけの価値を生み出しているかを評価するフレームワークであり、BSCとは異なる概念です。 - ウ(多種類の製品を生産・販売…):
この内容は「プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)」に関する記述です。事業ごとの資源配分を最適化するための経営分析手法で、BSCとは目的や活用の場面が異なります。 - エ(目標を達成するために意思決定…):
この選択肢は「SWOT分析」の説明です。企業や事業の内部要因(強み・弱み)と外部要因(機会・脅威)を整理して戦略立案に役立てるフレームワークで、BSCのような総合的管理手法ではありません。
難易度
この問題は「BSCとは何か」という基本用語の理解を問うもので、ITや経営の初学者にとってはやや難しく感じる可能性があります。しかし、選択肢を比較して「4つの視点」が出てくる記述を見つけられれば解けるため、基礎知識を身に付けていれば正答可能な中レベルの難易度です。
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用語補足
Balanced Scorecard(BSC):
企業や組織が戦略を実行に移すためのフレームワークで、財務・顧客・業務プロセス・成長と学習の4つの視点からバランスよく目標管理を行います。たとえば「売上向上」だけでなく「顧客満足度」や「社員教育」も同時に重視することができます。
SWOT分析:
企業や事業の「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4要素を整理し、戦略策定に活かす分析手法です。たとえば新規参入を検討する際に、社内外の環境を客観的に評価するのに使われます。
対策
このような用語問題では、経営戦略で頻出のフレームワーク(BSC、SWOT、バリューチェーン、PPMなど)を正確に理解することが重要です。名称だけでなく、どのような場面で使われるか、何を評価するための手法かまでを意識して覚えましょう。図解や具体例を使って学習すると定着しやすくなります。